坂の途中の家

角田光代 朝日新聞出版  2016年1月



坂の途中の家/朝日新聞出版
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刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの心と闇に迫る心理サスペンス。



裁判員制度は知っているが、自分が選ばれるとは思っていない。里沙子は、小さい子供がいるからと、面接のときに話をするが、選べれてしまう。夫の両親に子供を預け、裁判所に向かう毎日が続く。


里沙子は、裁判のことをいろいろ考える。
自分の境遇と重ね合わせてしまう。
自分はアル中じゃないかと懸念しながら、ビールを手に取る。

自分は、果たして、文香を愛しているんだろうか?
文香を預かり、料理を持たせてくれる夫の両親に感謝しながらも、文香の接し方にがまんならない。
夫は、自分なしで義父たちと連絡を取り合っているのではないのか?という疑問。
補助なんだから、そんなに真剣に関わらなくてもいいのではないか、無理ならやめればいいという夫に反感を持つ・・・・・・・

里沙子の心理描写が細かく描かれていて、心痛が伝わってきた。

例えば・・・・・・
ぐずるわが子をおいて先に行き、様子を見る。そんな行為は母親なら、したことのある行為だと思う。もちろん、夜、行うことではないのはのはわかるが、夫が心配するような虐待では、決してない。ああ、こんあことで誤解されたくない、言い訳なんかしたくない・・・・・・・こんなところにも里沙子の心情がよくあらわされている。


事件が起きた背景にあるもの、そんな風になったいくには、原因があるのだ。
心理的に追い詰められていく。そのことを恐ろしく感じた。


事件と里沙子の家庭の様子がシンクロする。もやもやした感情が残る。それは、一般でも起こりうる事実に近い内容だからかもしれない。


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