つまをめとらば


青山文平 文芸春秋 2015年7月


つまをめとらば/青山 文平
¥1,620
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太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか―。時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。



直木賞を受賞したので読んでみた。男性側から見た女性が描かれている。


つながりのない短編集なので、章が変わるごとに登場人物のおかれた状況や人物関係を把握するのに時間がかかった。(時代小説への苦手意識のせい?)


「ひともうらやむ」

美人の妻を持った男の悲哀。

美しい世津より見劣りした康江の変容が読みどころ。


「つゆかせぎ」

亡くなった妻の秘密を知り、夫が妻の本当の姿を追い求める。

わが子を育てるために体を売ってお金を得ているのに、新しい”種”がほしいという。

 

父親は必要がない。私の子と言い切る。強い母親だ。


一番、よかったのが、「乳付」

 

母乳の出ない母親が、わが子に乳を洗えてくれる女に嫉妬する話。

 

今は、ミルクがあるから、ミルクを与えれば問題がないが、この時代は、母乳の出る人が、母親に変わって母乳を与えるってことも多かっただろう。

 

助け合いのというか、一つの大きな家族の姿を感じた作品だ。


「ひと夏」
<誰もが赴任しても二年と持たぬというお勤め>とは、いったいどんなところなのか?
このむつかしい立ち居地で、はたして勤められるのか?




「逢対」,

<逢対とは、登城する前の権家、つまりは権勢を持つ人物の屋敷に、無役の者が出仕を求めて日参すること>らしい。


このひたすら待つという行為がどれだけ続くのか。雇ってもらえるかどうかも定かでないというのに~。

 辛抱が五年、十年って、この報われない行為をいつまで続けるのか?


友達思いの姿があった。

ここに登場する里も<嫁にしてもらおうなんて思わない。赤ちゃんができるまでのおつきあい。>


女性は、たくましく子供を育て、ひとりで生きていこうとする女性が多かったのか?


「つまをめとらば」

56歳の男が、結婚に踏み切る思いを描いている。



この時代のことを知らなかったことも多く、生活を盗み見したような感覚だった。

 

お気に入り度★★★