昭和の犬

姫野カオルコ 幻冬舎 2013年9月


昭和の犬/姫野 カオルコ
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昭和33年、滋賀県のある町で生まれた柏木イク。嬰児のころより、いろいろな人に預けられていたイクが、両親とはじめて同居をするようになったの は、風呂も便所も蛇口もない家だった――。理不尽なことで割れたように怒鳴り散らす父親、娘が犬に激しく咬まれたことを見て奇妙に笑う母親。それでもイク は、淡々と、生きてゆく。やがて大学に進学するため上京し、よその家の貸間に住むようになったイクは、たくさんの家族の事情を、目の当たりにしていく。
そして平成19年。49歳、親の介護に東京と滋賀を行ったり来たりするなかで、イクが、しみじみと感じたことは。



子 どもの頃、よく割れる父に謝り続ける。中学生の頃、母親からブラジャーを買い与えてもらわない。変人の父母に育てられたイク。大学生の時、家を出て、東京 へ。そして就職。人の家で貸間生活を転々とする。27歳の時から、両親や親戚の介護のために、東京と滋賀を往復。イク自身も体調を崩し、結婚もせず、現在 49歳にいたる。

こんな人生、誰が幸せといえるだろう。しかし、イクは「今までの人生は恵まれていました。」というのだ。

そこには、表面では見えないことがあったのだろう。
昭和の時代の豊かな自然の中で育った。
周りの人とのたくさんの関わりがあった。
そして何より、犬や猫との生活があった。

多くの事を望まず、なんでもない日常を過ごせることを大切に思うイクのことをいとおしく思った。



イクに限らず、父も母も、犬や猫や動物たちの存在が、彼らを癒していたんだろうな。

昭和の時代の風景が目に浮かぶよう。

私は滋賀県人ではないが、近隣に住んでいるため、方言の言葉が注釈なしでもわかり、話し言葉が「そんなに違わへん(それほど違っていない)」と、懐かしさを感じた。


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