ようこそ、わが家へ

池井戸潤 小学館文庫 2013年7月


ようこそ、わが家へ (小学館文庫)/小学館
¥730
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真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一 は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには 瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカー との対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜 む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。
 
 
 
 
気の弱い銀行員(今、ナカノ電子部品へ出張中)の倉田が主人公。
 
 
 
いつもは見逃すような出来事でも駅のホームの割り込みを注意したことから、嫌がらせを受けるようになる。割り込みを注意しただけで、逆恨みされるなんて、こわい!物騒な世の中だ。

嫌がらせは自分だけにとどまらず、家族をも巻き込んでしまうのだから、倉田の心中を察する。

そんな時、出向先の会社で、トラブルが・・・・・・

嫌がらせをする犯人は誰なのかというミステリー要素に加え、家族みんなでこの犯人に立ち向かっていく様子とナカノ電子部品の会社内での不正に気付いた倉田の話とが、うまく混ざり合って、一つの話に仕上がっている。




余談ですが・・・・・
同 じ銀行員でも、今話題の半沢直樹は、「やられたらやり返す、倍返しだ」と上司であろうと自分の意見を突き通すのに対し、倉田は間違っているのではないかと 社長に進言しても、社長から反論されれば、折れてしまう。まじめだけど、気が小さい男なのだ。半沢のような行いは、ドラマを見ている方は、気持ちがスカッとする が、こういう男は稀だ。倉田のような男の方が、世の中には多いのではないだろうか。

今までは、反論さえもできなかったような倉田が、家族のため、会社のためと、勇気を振り絞って、困難に立ち向かう姿がいい。

そして、この出来事が、息子の健太のことを深く知るきっかけになったことはよかったと思う。
また、事務員の摂子のような協力者がいたことにほっとできた。

 
 
 
お気に入り度★★★★