64

横山秀夫 文藝春秋 2012年10月


64(ロクヨン)/横山 秀夫
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昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、刑事部と警務部が全面戦争に突入。広報・三上は己の真を問われる。究極の警察小説!

警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事です。神の手は持っていない。それでも誇りは持って いる。一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人 生の本質が、ここにある。




警察というと、事件を捜査する刑事を思い浮かべてしまうが、実際には、刑事以外の仕事をしている人の方が多いという。はあ、大きな組織なのだ。それぞれの持ち場が一体となって協力し合えばこそ、成り立っている。そんな組織の内部でもポスト争いがあるんだなあと思った。


三上は、警務部。以前は刑事部にいただけあって、刑事部に戻りたいという思いを抱きつつ、仕事をしているが、それでも、警務部としての仕事を全うしようと奮闘している。

この三上が主人公。実は、三上の娘あゆみは、家出をし現在行方知れず。三上は、捜索を警察内部に頼んだことから、服従させられているという思いがある。

1964年に起きた雨宮誘拐事件。今だ犯人はつかまっていない。この雨宮家に長官が訪問する話をつけに三上が向う。そんな時、妊婦が起こした交通事故の匿名問題で記者ともめる・・・・・


刑事部と警務部との対立。警察と報道とのもめごと。話は一体どの方向に進んでいくのか?最初は先が見えなかった。

三上の家庭内のこと、警務部の部下たちとの関係、同期のライバルとの確執・・・・・
そして、匿名報道の問題点・・・・・
読み進むうちに、内容に引き込まれる。

それにしても、娘を思う親の気持ちというのは強いものだと思う。その執念たるやすごい。

三上の妻美奈子は無言電話をあゆみからの電話だと信じている。これの答えが最後の方で用意されていたが、まさか、こういうことだったとは!

驚きの展開と共に、三上の心の葛藤を描いた濃厚な人間ドラマだ。


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