俺俺


星野 智幸 新潮社 2010年6月

俺俺/星野 智幸
¥1,680
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な りゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何 だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。他人との違いが消えた100%の単一世界から、同調圧力が充満するストレス フルな現代社会を 笑う、戦慄の「俺」小説! 大江健三郎賞受賞作。

オレオレ詐欺をしてしまった俺の話から始まるが、みんな俺になってしまうというお話。

前半、メガトンで働く俺の話は、なぜこの仕事に就いたのかや仕事場でのやりとりなど、なかなかおもしろかった。

初め3人の俺がつるんで、酒を飲んだりしている。同じようにビールを飲み、話をしなくても気持ちがわかるから、他の人といるよりも気が楽。この3人の関係も、なにかほほえましささえ感じた。

ところが、俺が増殖していくあたりから、様子が変わってくる。

まあ、3人の俺なら、それでもいいだろうが、次から次へと俺になっていってしまう光景にはぞっとする。まわりがみんな自分の顔をしているというのは、気持ち悪いだろうな。そして同じ考えというのも、こわいかも。

自分ではない他の俺も俺だから、考え方がわかる。だから、わかりやすい。なんて、そんな簡単なことではない。行きつくところはそうなってしまうか!


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