週末は家族

桂望実 朝日新聞出版 2012年1月


週末は家族/桂 望実
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シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で 暮らす演劇少女ひなたの週末里親になって、特殊な人材派遣業に起用することになるが―ワケあり3人が紡ぐ新しい“家族”の物語。

血のつながりに固執しない家族の在り方を示唆している物語のように思う。

シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と 他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、結婚している。それは、愛があるからではなく、結婚していた方が、有利な面がたくさんあるからだ。まずは、この結婚自体が、新しい形?

そこに、児童養護施設で暮らすひなたを里親として、週末だけ預かっている。子どもが欲しいからではなく、大輔は、自分の仕事に利用できる子役が欲しかった。ただそれだけ。

そんな3人の集まりが、いつしか、心に変化が起きていくのだ。

子どもは親が会いに来てくれることを待っていると施設の人は信じている。親と暮らすことが子どもの幸せだと施設の人は信じている。しかし、そうではないこともあるのだ。もっと、ひなたの気持ちに寄り添ってやれないのかと思う。ひなたと実の母との対決(?)は見事だった。

ひなたは、大人びて末恐ろしい子のように感じたが、演技がうまくないと里親となってくれないのではないかと心配している。大人の顔色を伺わなくてはならない境遇であることに胸が痛んだ。



ひなたを養子にむかえる覚悟はできていない。週末だけ、ひなたを預かる。いいとこ取りではないのかと悩む瑞穂。しかし、そんな関係であってもいいではないか。

常識にとらわれない集まりを家族といより、チームという表現がすてきだ。血のつながりのある親子でなくとも、いいチームは作れるのだ。

シェイクスピアに心酔する大輔も、心配性の瑞穂も、生意気そうなひなたも、最初は好きになれずにいたのに、読み終わってみれば、なにか、とてもいい関係の3人に思えた。


お気に入り度★★★★