気分上々

森絵都 角川書店 2012年2月


気分上々/森 絵都
¥1,575
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「自分革命」を起こすべく親友との縁を切った女子高生、家系に伝わる理不尽な“掟”に苦悩する有名女優、無銭飲食の罪を着せられた中二男子…、人生、単純 じゃない。だからこんなに面白い。独特のユーモアと、心にしみる切なさ。森絵都の魅力をすべて凝縮した、多彩な9つの物語。

ウエルカムの小部屋
理想的な婚約者と別れて自称発明家の男と暮らし始める。彼は言う。自動開閉式便蓋は、どうかな。君を無条件で迎え入れてくれるんだ」

こんな男と暮らしたら、生活力はないけれど、想像力豊かで楽しいかもしれない。


彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日
 
元彼の結婚式の帰りに初めて一人で立ち寄ったバーで隣席の男から声をかけられる。「互いに一つずつ願いを叶えあいませんか」

こんな言葉をかけられたら、何を望むだろう?

男女それぞれの立場から書かれているので、同じ状況での気持ちの違いがおもしろい。

17レボリューション
 
17歳の誕生日、わたしは親友のイヅモに絶交を申し渡した。「なんか好き」ってだけで人と付き合ってきたが、これからは、価値基準を築き「イキがいいか、悪いか」で判断することにした。

わたしって、おもしろいこと考えるな。これも若いってことだろう。毛筆、草書で手紙を書くようなイヅモなる高校生って、普通いないだろうって突っ込みを入れながら読んだ。


本物の恋
 
病院帰りの昼下がりカフェテラスの一角に彼はいた。もう、8年も前なのに、彼であることを一目で見抜く。

一つの岐路となるきっかけの出来事だから、
強烈な印象として、残っていたのだろう。ラストにちょっとした驚きも・・・・・・・・

東の果つるところ
 
私の中でおまえとともに病巣が肥大化しているため私はおまえの誕生を待つことができそうにない。15歳のおまえに手紙をしたためることにした。

左右対称の家系ってすごい。


本が失われた日、の翌日
 
本は昨日付けでこの世界から失われた

本が失われたら、楽しみがなくなる!


ブレノワール
 
僕はブルターニュ地方に母と伯父の家で暮らしていたが、義務教育終了後、親元を離れていた。6年後母が危篤と知らされ、パリの二つ星レストランで働いていた僕は、母の元に・・・・

母のことを理解でき、この地方に帰り自分の進むべき道を見つけられた僕の姿がよかった。


ヨハネスブルグのマフィア
東京湾合同庁舎で黄熱病の予防接種を受けに行くが、何時間も待たされた後、注射が終わると「飲酒や運動を控えてください」と説明を受ける。同じように注射を受けに来ていた彼から「憂さ晴らしに、ビールでも飲んでかない?」と誘われる。

今まで、何も起こらなかったから、これからも起こらないとは限らないのだ。寝つきが悪時、彼の独自の方法、試してみようかな。



気分上々

親父の遺言、「いい男になれ。いい男はむやみにべらべらしゃべらない。」というのを守る中学生のオレは、小一からクラスが同じ女の子依林からうらまれ、どんどん距離が空いていく。

中学生の男の子ってこんな感じなのかな。心配する母親に気を使うこともできる年齢なのだ。



海外の青年の話から、日本の中学・高校生、四十路前の女性まで、多くのバリエーションで、その時その人の気持ちにより添った物語は読んでいて飽きない。



この短編集にも主婦目線が・・・・・・
8年という年を表すのに、「フライパンの樹脂加工もはげて玉子焼きが焦げつきだす。」
そんな表現にほくそ笑んだ。

お気に入り度★★★★