頼むから、ほっといてくれ

桂望実 幻冬舎 2012年8月

頼むから、ほっといてくれ/桂 望実
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トランポリンでオリンピックを目指す五人がいた。天才肌の遼、愚直な順也、おっちょこちょいな慎司、目立ちたがり屋の洋充、怖いもの知らずの卓志。少年の 頃から切磋琢磨してきた彼らに、安易な仲間意識などなかった。「オリンピック出場枠」という現実が、それぞれの青春を息苦しいものに変えていく。夢舞台に 立てるのは、二人だけ。選ばれるのは誰なのか?選ばれなかった者は敗残者なのか?オリンピックは、すべてを賭けるに値する舞台だったのか?懸命に今を生き る者だけに許された至福、喪失、そして再生を、祈りにも似た筆致で描いた傑作長編小説。

今年オリンピックが開催されただけにタイムリーな話。トランポリンというあまり知られていない競技の話である。

選手、コーチ、母親、審判員といろんな視点で描かれているので、同じ出来事でも違った方向からみることができてよかった。



ナショナルチームのコーチは、意図的に鬼コーチキャラを演じている。そんなこともあるんだなあ。


審判員にはやはり公正な判断をしてほしい。暖かい目で見守る審判員の姿がよい。

選手だけでなく家族は一体となっている。家族の協力の力は大きいだろう。

才能がありながら、目先の快楽を優先し、競技をやめてしまう選手もいる。

スポンサーがついたらいいが、働きながら、競技を続けている選手もいる。


ペアを組んでいると友達のようにみえるが実はそうでなかったり、ライバルだと思っていた相手と共感しあうことがあったり・・・・・・・


選手は好きなトランポリンをやりたいだけ。それなのに、日本のために頑張らなければいけないのか。みんなは「がんばれ」と声をかけ、プレッシャーをかけてくる。「頼むから、ほっといてくれ」と言いたくなることもあるのだろう。


上位に食い込むために高度な技に挑戦するか、安全な道を選ぶのか、そんなかけひき。どちらを選ぶかは本人が決めることだ。結果がどうであれ、悔いのない試合をしてほしいと思う。


オリンピックを目指して練習に励む。オリンピックに出場できるのは、限られた人たち。出場できた人、できなかった人、オリンピックに出場できても、いい成 績を残せなかった人、夢が叶ってメダルを獲得した人と様々だ。そんな人たちの心の葛藤が描かれている。いろんな人たちの思いを感じることができた。



引退の時期はいつにするのか?、引退後はどのような道に進むのか?


オリンピック選手といえどもそれぞれに人生があること、オリンピックが終わっても、その人生は続いていくことを実感した。


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