ピエタ

大島真寿美 ポプラ社 2011年2月

ピエタ/大島真寿美
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18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で“合奏・合唱の娘たち”を指導して いた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる―聖と俗、生と死、男と女、真実と虚構、絶望 と希望、名声と孤独…あらゆる対比がたくみに溶け合った、“調和の霊感”。今最も注目すべき書き手が、史実を基に豊かに紡ぎだした傑作長編。

ヴェネツィアで、ゴンドラで行き来する人々、仮面をかぶった人たちであるれるカーニバルの喧噪、ひっそりたたずむピエタ慈善院、そこでの合奏・合唱・・・・・・・・・
その光景が鮮やかに目に浮かび、その時の音楽が聞こえてくるよう。まるで、その場所に自分も一緒にいて、彼女たちの会話や行動を、ものかげでこっそり盗み見していたような、そんな感覚を味わった。


孤児ではないが子どもの頃にピエタ慈善院に音楽を習いに来ていた貴族の女性・ヴァロニカ。彼女に頼まれた楽譜探しを、エミーリアが行っていくうち、昔の出来事が、一つづつ紐解かれていく。まるでミステリーの謎解きのように。ああ、そうだったのかと、新しい発見ばかり。

自分の生まれを選ぶことはできないし、人生は思い通りになるわけでもない。誰しも悔いを持ちながら、それでも前向きに生きている。そんな女性たちがいとおしかった。

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