水底フェスタ

辻村深月 文藝春秋 2011年8月

水底フェスタ/辻村 深月
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村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き“村を売る”ため協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった―。辻村深月が描く一生に一度の恋。




広海が、まわりが見えず、由貴美に夢中になっていく少年の危うい情熱。その後、多くのことを知った時の葛藤など、広海の心の変化の描写はすごい。

広海の視点で描かれていて、どんな人なのかの印象を受け取るが、見方が変わるとその人の印象がガラッと変わってしまう。そこらの表現はうまい。

閉鎖された村の中での出来事がおそろしい。けれど、この村に住んでいる人たちは、外の世界のことを知らずにそれが当たり前と思っている人も多いのではないのか。そう思うと、いっそうおそろしい。

達也のこと、意外な内面を知り、見直す場面もあった。しかし、むかし、門音にしたことが、許せなくて、広海が普通に付き合っていることが信じられず、いくら今の達也がどんなに広海のことを大切に思っているのを知っても、感動できなかった。

由貴美のことをどう受け止めればいいのか。悪女なのか、広海の恋愛相手として見るべきなのか・・・・・・・

引き込まれる内容で、一気に読んでおもしろかったのだが、何か、もやもやとした気持ちが残り、どうもすっきりしない。

お気に入り度★★★