メグル

乾ルカ 2010年2月

メグル/乾 ルカ
¥1,680
Amazon.co.jp

「あなたはこれよ。断らないでね」奇妙な迫力を持つ大学学生部の女性職員から半ば強要され、仕方なく指定されたアルバイト先に足を運んだ大学生たち。その アルバイトは、彼らに何をもたらすのか?五人の若者を通して描かれるのは、さまざまな感情を揺り動かす人間ドラマと小さな奇蹟の物語。小説の楽しみを存分 に詰め込んだ愛すべき傑作、鮮やかに登場。

女性職員から、なかば、半強制的に紹介されるアルバイトをする学生たちの物語。その学生にぴったりのアルバイトを紹介するのだから、驚き。でも、アタエルのだけは、行かない方がいいといっていたけれど・・・・・

ヒカレル
学生高橋賢治は、昨夜亡くなった木林のお婆ちゃんのご遺体に添い寝するアルバイト。

木林のお婆ちゃん、スミヲさんは、引く手となって、あの世へ連れて行こうとする。孫の美香ちゃんは、ブスでみんなに嫌われているから、おばあちゃんといっしょに逝きたいというが・・・・

最初は、ぞっとするような話だったけれど、最後で雰囲気が一転。スミヲさんが、引いていったもの・・・・・・これなら、大歓迎。

 

モドル
学生飯島涼子は、H大学医学部付属病院内の店舗商品の入れ替え作業のアルバイト。

父は、手術後、後遺症が残り、母に当たるようになり、母は父に尽くしながら、父の機嫌を悪くしていた。飯島がアルバイトに行った先は、父が手術を受けた病院であり、母親が結婚指輪をなくしたところでもあった。

これをきっかけに、以前のような家庭に戻れるといいな。

 
アタエル
学生高口康夫は、1日1回の犬の餌やりのアルバイト。

その犬は、大型で獰猛だといううわさ。旅行に行くという依頼主の留守に、毎日、一日分の肉を解凍し、えさを与える。

一体、この肉って何の?想像はついたが、それ以上に、気味悪いラスト。

 

タベル
学生橋爪啓太は、依頼主佐藤が作る料理を食べるアルバイト。

中学1年の時、教室でゲロしてしまったことから、ゲロリーマンとからかわれたことをきっかけに、人といっしょに食事ができなくなり、ゼリー飲料で栄養をとっていた橋爪。佐藤が作る料理は、超一流のごちそうだったが、ほとんど食べられず・・・・

どんな美味しいものでも、たった一人で食べたら、味気ない。誰かと一緒に食べれば、おいしくなる。


メグル
奨学係りの大橋冬樹は、5年間同じ日に、冬囲いの撤去等の庭仕事のアルバイト。

庭仕事をする場所は、大橋のすんでいる家の庭だったのだが、見知らぬ女性、三瀬みゆきが、今日は来てくれてありがとうと自分の庭先をあれこれしてもらうように指示する。

 季節は当たり前にめぐるという、ラストの言葉が、素敵だった。

 

自分の抱えている悩みがこのアルバイトを通して、いい方向に向かうきっかけとなっている。読後感もいい。ただ、アタエルだけは、ミステリーホラーのような恐ろしさがあった。

いつも事務的で、必要最小限のことしか話さない奨学係の女、学生たちから不気味がられているこの女性職員悠木。彼女の人生も、最初と最後の章に描かれ、彼女もアルバイトをして、助けられた人物の一人なんだあとしみじみと感じた。



お気に入り度★★★★★