灰色の虹

貫井徳郎 新潮社 2010年10月
灰色の虹/貫井 徳郎
¥1,995
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身に覚えのない殺人の罪。それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。ほかに道はな かった。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。ひとりの刑事が被害者たちを 繋ぐ、そのリンクを見出した。しかし江木の行方は杳として知れなかった…。彼が求めたものは何か。次に狙われるのは誰か。あまりに悲しく予想外の結末が待 つ長編ミステリー。



伊佐山刑事のやり方は強引過ぎる。こんな刑事の取り調べを受けたら、自分が無実であっても、自白してしまうだろう。この本を読んでいたら、自分の無実をどこまで主張し続けることができるのか、自信がなくなってきた。


刑事、検事、弁護士、それぞれの日々の仕事ぶりが、江木雅史の事件とは関係ないところの部分も描かれていて、その人物像がよくわかる。その話も面白い。

そのなかで・・・・・
まじめな裁判官の石嶺の話が、妻の浮気をやめさせようとするためにしていることが、人に言うわけにはいかず、そのために・・・・・

そんなことしている場合でなかっただろうに。


冤罪はどのようにして作られたのか。罪を背負わされた者は、人生を狂わされてしまう。その怖さ。

雅史の婚約者だった由梨恵が、ずっと信じ続けることができなかった自分を責め続けているのも、痛々しい。

雅史の姉が、縁談が破談になり、雅史を恨む気持ちもわかる。

 雅史の信じてもらえない無念や怒り、家族の苦しみが、いやおうなく迫ってくる。


復讐がいいことでないのは、わかる。しかし、復讐するしかなかった江木の心情は、思い図ることができる。

ミステリーとしては、予想できる範囲内の結末ではあったが、冤罪の恐ろしさを知るやりきれない一冊だ。

お気に入り度★★★★