勝手にふるえてろ

綿矢リサ 文芸春秋 2010年8月

勝手にふるえてろ/綿矢 りさ
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賞味期限切れの片思いと好きでもない現実の彼氏。どっちも欲しい、どっちも欲しくない。恋愛、しないとだめですか。

経理課で働くヨシカには、彼氏が二人いる。

イチは私の最愛だけれどとうてい添い遂げられそうになく彼がおびえがちに微笑むのを見ていただけの関係。中学2年の時からの片思い。

ニは会社の交流会で知り合った体育会系のあつくるしいオーラの男性。デートをしても、気持ちをわかってくれない。全く二を愛していない。

イチと結婚すれば夫を見張り続ける看守の花嫁になる。
二と結婚すればその先の自分の人生なんかどうでもよくなる。

イチと二の間で揺れる気持ちを描いている。「インストール」の綿矢さんと同じような文体だ。その感じ方が独特で妄想めいた言葉がおもしろい。


片思いは思っているうちに理想の人にしてしまうものだ。
同窓会を開くのにみんなを集めるなんて、ヨシカにとって、思い切った行動力を示したものだ。
イチと話しができたこと、昔の出来事を覚えてくれていたこと、そのことだけで、私なら舞い上がってしまいそうだろうな。


つわりがひどいといって産休?をとるなんて、ちょっとずれた発想もあったけれど、友達の裏切りの悩み、恋愛にあせっているヨシカの気持ちは感じ取れた。今までに恋愛の経験がないからだろうが、そんなにあせる必要もないと思うけれど。

 ラスト
自分をぶつけることで、本当の姿を見せることはいいと思うけれど、この先大丈夫か?
イチ、ニと彼氏を番号で呼んでいたのに、最後で呼び名が名前に変わったってことは、この現実を受け入れるというヨシカの気持ちかな。
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