小暮写真館

宮部みゆき 講談社 2010年5月

小暮写眞館 (100周年書き下ろし)/宮部 みゆき
¥1,995
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高校生の花菱英一は、両親、弟の光と新しく買った古家に住み始めるが、その家は、昔小暮写真館だった店舗付住宅で、店舗の部分はそのままにしていた。看板もそのままにしてあったため、小暮さんがプリントしたという心霊写真が持ち込まれる・・・・・・

心霊写真の謎を花ちゃん(英一)が中心となり、弟のピカ(光)、幼友達のテンコ(店子力)、色黒の同級生コゲパン(寺内千春)、コゲパンに思いを寄せる橋口らが、謎を解いていく。「小暮写眞館」「世界の縁側」「カモメの名前」

心霊写真には生きている人間の思いが写真に写ったりするものだ。こわいのは,霊よりも生きている人間の心だったりする。写真ひとつの中に、そこまでに至る までの人生が凝縮されているように思った。花ちゃんたちが調べたことにより、その人の人生が明るいほうに向いていったらいいなと思う。

そしてラストの章「鉄路の春」では、花菱の子どもの風子が4歳のときに亡くなったことに対する、家族のそれぞれの思いが語られている。
幼い子どもを亡くすことは、それぞれに深い傷を背負っていたのだと感じる。ビカがこんなにも苦しんでいたなんて・・・・・・とても切なくなった。

ここに登場する高校生たちは個性的に描かれているが、花ちゃんやテンコの親、不動産屋の須藤社長や事務員の垣本ら大人たちも一風変わっった部分があり、なかなか味があった。

そして、花ちゃんの意外な恋の行方も見逃せなかった。

お気に入り度★★★★