横道世之介

吉田修一 毎日新聞社 2009年9月

横道世之介/吉田 修一
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横道世之介。
長崎の港町生まれ。その由来は『好色一代男』と思い切ってはみたものの、限りなく埼玉な東京に住む上京したての18歳。嫌みのない図 々しさが人を呼び、呼ばれた人の頼みは断れないお人好し。とりたててなんにもないけれど、なんだかいろいろあったような気がしている「ザ・大学生」。どこ にでもいそうで、でもサンバを踊るからなかなかいないかもしれない。なんだか、いい奴。


東京の大学に合格し、長崎から出てきて一人暮らしを始めることになった横道 世之介。入学式の日に知り合った倉持や、クラスに2人しかいない女子のうちのひとり阿久津唯とサンバサークルに入ることになる。そのサークルの先輩の紹介 でホテルでアルバイトをし、弟のふりを頼まれた女性片瀬千春に恋をし、彼女のために免許を取ろうと教習所に通い、クーラーのある加藤の部屋に入り浸り、加 藤と教習所で知り合った女の子とWデートすることになり、運転手つきの黒塗りの車でいつも現れる祥子にほれられ・・・・・・・・・・

どこにでもいるようななんでもない地方出身の大学生の1年間の生活が描かれている。そして、その間に、世之介と関わった人たちのその後の様子が描かれている。その人たちのその後にびっくりするような人生を歩んでいる人もいた。

そのときは、そうも思ってなかったようだが、昔を懐かしく思い出すときに、記憶に残っているのが、この世之介なのだ。特に、何かに秀でているわけでもない。どちらかといえば、何も出来ないような人なのだが、いやみがなく、憎めない人なのだ。



<いろんなことに「YES」って言ってるような人だった。もちろん、そのせいでいっぱい失敗をするんだけど、それでも「NO」じゃなくて「YES」って言ってるような人>


<世之介に出会った人生と出会わなかった人生で何かが変わるだろうかと、ふと思う。 たぶん何も変わりはない。 ただ青春時代に世之介と出会わなかった人がこの世には大勢いるのかと思うと、 なぜか自分がとても得をしたような気持ちになってくる>

昔の世之介を思い出した人たちの言葉であるが、世之介の事をよく言い表していると思う。

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