扉守 潮ノ道の旅人


光原百合 文藝春秋 2009年11月


扉守(とびらもり)/光原 百合
¥1,600
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瀬戸の海と山に囲まれた懐かしいまち・潮ノ道にはちいさな奇跡があふれている。こころ優しい人間たちとやんちゃな客人が大活躍。


「帰去来の井戸」 「天の音、地の声」 「扉守」 「桜絵師」 「写想家」 「旅の編み人」 「ピアニシモより小さな祈り」からなる連作短編集。
 

瀬戸内沿岸の町、潮ノ道(尾道が舞台になっているらしい)。山と海に囲まれ、階段のある町。風情があって、とてもいい町に思えた。


瀬ノ道を出るときに飲んでおけば、もう一度ここに戻ってこられるという井戸。

解体しようとすると、怪現象が起きる古い洋館小幡屋敷。

周りの思惑に振り回されていたのに、はっきりと自己主張するようになった雪乃。
絵の中のものが生きているように変わる絵。
余分な気(エナジイ)を取ってしまう写真。

編んだ人の想いがこもっている編み物。

弦を張られるのを嫌がっているピアノ。


不思議な現象がおきるが、それをこわがることも、不思議がることもなく、普通に日常に取り入れている瀬ノ道の人たち。そのやさしさや心の大きさがすばらしい。


切ない話なのだが、そんな中に、人の心を大切にしようとする暖かい人たちの想いがとてもよかった。


ふざけた爺さん住職「了斎」を始め、不思議な力を持った人たちも印象深かった。


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