ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

辻村深月 講談社 2009年9月

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)/辻村 深月
¥1,680
Amazon.co.jp



真面目でおとなしく、与えられた仕事を黙々とこなすOLの望月チエミ。30歳で未婚、両親と暮らすチエミは、両親に何でも話をする間柄で、とても仲がい い。そんなチエミの母親が自宅でわき腹を刺され、死亡しているのが発見される。当日家にいたはずのチエミは失踪。母親名義の印鑑と通帳、キャッシュカード の類も消えていた。チエミの幼馴染の神宮司みずほは、結婚し都会でフリーライターの仕事をしていたが、チエミの行方を捜すため、故郷に帰り、友達や恩師に 話を聞くが・・・・・・・・・・・・

地元で働く女性たちの持つ夢や欲望は「ここ」で「幸せ」に成ることがすべて。人生プランは、誰かと結婚しなければ、先に進むことがない。「自立」は結婚し て初めて実現する。地方で働く人たちは、そういう人たちばかりではないだろうが、チエミや彼女の周りの人たちの考え方はこんな風なのだ。

彼女たちは合コンに明け暮れる毎日。友だちとして表向きは仲良くしていても、心の中では見下していたり、利用しているような関係。こんなにあからさまでなくても、ある程度そういうところは女性にはあるなと、女性である私自身も含めておそろしいと思った。

30歳という年齢。やりたいことをやって落ち着いている年。
結婚、妊娠、不倫、流産。30歳というのは女性にとってひとつの岐路かもしれない。



それと、母と娘の関係についても考えさせられる。

2組の母と娘。一番近い存在が親で密着している関係。小さいときのことで親を許すことが出来ず、う まくついあえない関係。子供にとって、親は選べないし、小さいときは親が絶対的な存在。親がいつも正しいとは限らないとわかるのは何歳になったときなのだ ろう。いつかは親から離れて自立していくものだが、いい関係を作るというのは難しい。

 

チエミは、小さな世界の中で閉塞的な考え。それがとても悲しく思えた。一途な思いが切なかった。
みずほとチエミは幼馴染とはいえ、高校も大学も違う。住む場所も地方と都会。こんな事件が起きなかったら、お互いの人生は交わることもなかったかもしれない。しかし、この事件により、つながった二人の関係。このときにやっと本当の気持ちが理解し合えたというのはよかったというべきか。もっと早くにわかっていればよかったというべきか。

お気に入り度★★★★