遥かなる水の音

村山由佳 集英社 2009年11月


遥かなる水の音/村山 由佳
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「僕が死んだら、遺灰をサハラに撒いてほしい」。パリの旅行代理店に勤める緋沙子は、若くして逝った弟の遺言を叶えるため、モロッコを旅することになる。同行者は、弟の友人だった浩介・結衣という若いカップルと、中年のフランス人男性。資産家の彼はゲイであり、晩年の弟と同居していた。互いを理解できないままに、さまざまな事情を抱えながら、4人は異国を旅する。ムスリムのガイド・サイードも加わり、異文化に触れていくなかで4人は徐々に、互いの抱える問題や思いに気がついていく。そんな折、仕事のトラブルから浩介がパリに戻ることになり・・・・・・。

周(あまね)の遺言により、遺骨をサハラ砂漠に撒くために、久遠緋沙子・奥村浩介・早川結衣・ジャンクロードの4人が、旅をする話。

4人はそれぞれに問題を抱えている。それが何なのかは、読んでいくうちにわかってくる。

案内人のサイード・アリが呟いていた。
<なるほどそれは男の遺言だったかもしれない。だが、現実には、遺灰を砂漠まで運んできてまこうが、家の裏庭にばらまいて花の肥料にしようが、何が変わる?・・・・・・・・・・・・・こんな旅、自己満足もいいところだ。>

たしかに、そうなのだが、成仏という考え方からすると、故人の遺言は守ってやりたいと思うのが、大切だった人を亡くした者の思いだろう。


旅でいろんな人と出会い、異国の宗教や自然や文化に触れていくなかで、自分の本当の気持ちに気づき始める。そして、生きているうちに出来なかったことの周の無念さを改めて感じるようになる。


それでも、死は漠然としたものであったのだ。それが、旅の途中で起きた事故により、死ということを身をもって感じる事になる。そんな旅を続けていくうち、自分の道を見出していくのだ。


モロッコの町からサハラ砂漠へと向かうラストシーンが絵画的。


お気に入り度★★★★