よろこびの歌

宮下奈都 実業之日本社 2009年10月

よろこびの歌/宮下 奈都
¥1,365
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御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感 から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる…。あ きらめ、孤独、嫉妬…見えない未来に惑う少女たちの願いが重なりあったとき、希望の調べが高らかに奏でられる―いま最も注目すべき作家が鮮烈に描く、青春 小説の記念碑。

新設校の私立明泉女子高等学校に通う高校生たち。第一志望で入ったわけではない。何らかの事情を抱えている。


音楽学校の受験にすべて失敗した著名なヴァイオリニストを母に持つ御木元玲。

1時間もかけて自転車通学するうどん屋の娘原千夏。

以前ソフトボールのエースだった中溝早希。

音楽室に自分だけおじいさんの姿がみえる能力の持ち主牧野史香

南くんとのことで地下のシェルターにこだわりうまく絵がかけなくなった里中佳子。

春が苦手で何かで一番になれないから勉強しクラス委員をする佐々木ひかり。


だれとも関わろうとしない。家庭の事情を隠していたい。あきらめきっている。自分が何者かわからない。とりあえず勉強している・・・・・・・・


そんな生徒たちが、合唱コンクールに参加することに~。

たかが、合唱コンクール。されど、合唱コンクール。
彼女たちの考え方が、少しづつ変わってくる。


<形を探して進めなくなるよりは、とりあえずダラダラとでも歩き出してみよう>

少女たちが、今までの自分とは違う一歩を進みだそうとしている姿が輝いてみえた。


高校生特有の悩みや不安の描写が鋭く、それを乗り越える方向が見つかる1篇ごとのラストがいい。



彼女たちが、明るい顔で元気に歌う歌声が聞こえてきそうだ。



家庭の違いをうまく表現したサンタ問題

やる気をなくしている状態をいった十六にして余生

楽しめるときに楽しめない自分の気持ちを言い表した春の背中

ところどころに作者の言葉が光っていた。




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