ラブリーボーン

アリス・シーボルト 片山 奈緒美 訳 角川書店 2003年5月 

ラブリー・ボーン/アリス・シーボルド
¥1,680
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ある冬の日、少女は殺された。けれど、少女は天国から愛する家族を見守りつづける。「みんなのこと大好きだから、ずっとそばにいるから、だから…」。いつ もと変わらぬ学校からの帰り道、家に帰れば大好きな家族が待っているはずだった。けれど近道をするために通ったトウモロコシ畑で悲劇は起こった。近所に住 む男に、14歳の少女スージーはレイプされ、殺されてしまったのだ。愛する娘の死に、家族は静かに崩壊していく。父親は犯人を追うことだけに人生を費や し、娘を守ることができなかった罪の意識から母親は家を出ていってしまう。妹と幼い弟は、姉の“影”を感じ、自分の存在に不安を募らせる。そのすべてを スージーは天国から見守り、けっして聞こえることのない声を愛する家族にかけつづけていた。「わたしの死をひきずらないで。ただ忘れないでほしいだけな の…」。家族の崩壊と再生、そして永遠に消えることのない愛を描き、全世界からかつてない熱狂で迎え入れられた、250万部突破の驚異のデビュー小説。



天国というところの描き方が独特。誰もがよく見る夢が現実になる。天国の案 内人の新人カウンセラー・フラニー、ルームメイト・ホリーがいたりする。強く望むと現実となり天国が広がっていく。人の人生は見ることが出来るが、成長するこ とは出来ない。死んでからも、こうして、現世に戻ってこられて、その後の様子を見ることが出来たら、安心できるかな。でも、スージーの事件をきっかけに、 家族が崩壊していくのを見守っているのは、スージーはつらかっただろうな。スージーは現世でやり残したことをいろいろと思い出す。そういうことが、やり直 せるのなら、天国生活も悪くない。


読者には犯人はわかっているが、警察が、追い詰めないのでいらいらした。でもこれは、家族再生の物語であり、犯人逮捕の話ではないようだ。

犯人を追うことに必死になる父親。いい母親を演じてきたことに疲れ家を出る 母親。最も近い存在だった妹リンジーや、スージーのことを知らされてない幼い弟バックリーは、不安になる。このように、スージーの事件をきっかけに崩壊し てしまった家族。彼らは、どのように立ち直ったのか。

一度離れてしまったとしても、家族の絆は取り戻せるのだと感じた。やはり家族というものはいいものだ。

レイプされたスージーは、犯人に強烈な恨みを持っている風でもなく、天国と現世を行ったりきたりして、淡々と物語が進んでいくのが意外な感じだった。


お気に入り度★★★