ニサッタ、ニサッタ

乃南アサ 講談社 2009年10月

ニサッタ、ニサッタ/乃南 アサ
¥1,785
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最初の会社を勢いで辞め、二番目の会社が突然倒産し、派遣先をたて続けにしくじったときでも、住む場所さえなくすことになるなんて、思ってもみなかった。ネットカフェで夜を過ごすいま、日雇いの賃金では、敷金・礼金の三十万円が、どうしても貯められない。失敗を許さない現代社会でいったん失った「明日」をもう一度取り返すまでの物語。

主人公の片貝耕平は、東京の三流の大学を出て就職するが勢いで辞める。2番目の会社は、社長が夜逃げしてしまう。派遣会社に登録し、羽田空港、大手のレジャー用品会社で働くもののは自分の希望の職者でないからとやめてしまい、次の会社は『派遣』『派遣』と呼ばれて差別され嫌気がさして休んでしまう。学習塾『フロンティアゼミナール』で働いているときには、インフルエンザにかかり辞めさせられ、パチンコで大もうけしたと思ったら、女にだまされ、住む家さえもなくなり、ネットカフェで過ごすことになり、消費者金融で金を借り、借金が増え・・・・・・・・・

だんだん、悪い方向へ向かっていく耕平。どこから、間違っていたのか。
耕平は、堅実に生きていこうと自分に言い聞かせて、その時そのときで一応の努力はしてきた。家に頼ることは出来ないと、東京で一人でやっていこうとしているのだ。そんなに怠け者でもないし、根っからの悪人でもない。しかし、甘さが目に付く。もう少し、忍耐が必要だと思う。しかし、ひとたび、うまくいかないことがおきると、取り返しのつかない方向へ向かっていくものかもしれない。

でも、耕平には故郷がある。家族は頼れないと言いながらも、家族があり、故郷があるということは救われることだ。ののしりあい、大喧嘩をしたとしても、次にはけろっとして付き合える。家族はいい。

少女杏菜はいったい何者かと不思議だったが、杏菜が、耕平や耕平の家族と関わることで、
杏菜自身だけでなく、耕平や耕平の家族も変化し成長していく様子がよかった。

そして祖母ちゃんの言葉がいい。消えてしまいたいと思いつめた耕平だが、お祖母ちゃんの言葉で救われたのだ。

やっとやっと、自分の道をみつけた耕平。長かった道のりだったな。


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