夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

カズオ・イシグロ   土屋政雄訳 早川書房 2009年6月
夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語/カズオ・イシグロ
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人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。

老歌手
流しのギタリストヤネクが、アメリカのベテラン大物シンガー トニーガードナーに頼まれて、ガードナーの妻リンディに聞かせるために、ゴンドラから、演奏する・・・・・・・・・

結婚記念日か何かに、妻に歌を送るロマンチックな話かと思ったけれど、事情は複雑・・・・
音楽を続けるために結婚を利用するということは私は理解できなかった。

降っても晴れても
レイモンドは、ロンドン行きの計画を立て、大学時代の親友チャーリーの家にとめてもらうことにした。レイモンドはチャーリーから、夫婦の危機だから、お前に仲立ちを頼みたいと・・・・・・・・・・

頼りにされていると思ったけれど、実は・・・・・
エミリの手帳を盗み見したとき自分の悪口を見つけて、つい破ってしまう。それを隠そうとする行動がおもしろかった。

モールバンヒルズ
シンガーソングライターを目指すぼくは、モールバンヒルズで姉が経営しているカフェを手伝うが、音楽家夫婦に出会う・・・・・

夜想曲
売れないサックス奏者は、妻との離婚をきっかけに、整形手術を受ける。ホテルの隣の部屋には、同じく整形手術を受けたリンディがいて、二人は、ホテルへ繰り出し・・・・・・・

整形手術をしたことは、よかったのか?ホテルでの騒動が笑える。

チェリスト
チェロを弾くティボールは、リサイタルを聞いたひとりの女性から、音楽らしきものがないと批判される。この女性、エロイーズ・マコーマックにチェロの指導を受ける・・・・・


音楽に関係した人たちの物語。旧共産圏と西側との歴史的背景もあるようだ。有 名になるために結婚をする。あるいは分かれる。栄光が過去のものになっている。才能があっても、日の目を見ない。そんな人たちの、人生はままならないこと を、しっとりと、時にはユーモアを交えて描かれている。どれも、はっきりとした答えがないが、それもまた、余韻が残る。

ちょっと、予想に反した展開があり、驚かされることも・・・
切なくむなしい場面もあったけれど、それが人生なのかな?
お気に入り度★★★★