風の中のマリア

百田尚樹 講談社 2009年3月

風の中のマリア/百田 尚樹
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オオスズメバチのワーカー(ハタラキバチ)のマリアは、「疾風のマリア)」と呼ぶものもいる程、狩りがうまく、すばらしいハンターだった。獲物を捕らえ肉団子を作ると、妹たちが待つ巣へと運ぶのだった・・・・・・・


 オオスズメバチは体も大きく非常に獰猛で攻撃性も攻撃力もきわめて高い。ミツバチや虫たちはえさとなってしまう。人間からみても、刺されて死ぬこともあ り、決していい生き物という印象はしない。しかし、スズメバチからしたら、生きていくために、自分たちの巣を守るために行っている行為なのだ。

虫たちは、恋をし、交尾し、子孫を残すために生きている。それなのに、マリアのようなワーカーは、戦い、妹たちのえさを運ぶためだけに生きている。マリア と他の虫たちとの違いはここにある。では、どのようにして、子孫を残すのか。スズメバチの巣全体がひとつの帝国となり、次の世代を作っていく。   

女王バチは多くの卵を産む。すべてがメスで、成虫となったハチはワーカーとなり、妹たちのえさを運ぶ任務を得る。女社会なのだ。しかし、時が経つと、オス を生むようになる。また、同じように生まれても、栄養をたくさん与えることで次の女王ハチとして成長していくという。その大量のえさを取るための争いが壮 絶なものだった。
オオスズメバチの生態がよくわかり、とても興味深い内容だった。そして、自分たちの遺伝子を残すために懸命なのだと感じた。

マリアは多くの虫たちと出会い、時には、オスのハチと恋の予感さえ感じる時もある。そんな中で、毎日、戦っている自分に疑問を持つようになる。しかし、マリアは考えるのだ。

<「偉大なる母」は産卵する喜びと引き換えに、空を飛ぶ自由を失った。命の尽きるその日まで太陽の光さえ届かない暗黒の世界ですごすことになるのだ。ワーカーは、一生を戦いと労働の為に生きるが、最後の時まで自由に大空を舞うことができる>

どちらが幸せなのかわからないが、それぞれに自分に与えられた任務を黙々とこなす姿はとても偉大なことのように感じた。
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