架空の球を追う

森絵都 文芸春秋 2009年1月

架空の球を追う/森 絵都
¥1,400
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11編からなる短編集。


「架空の球を追う」野球の練習をする我が子に注ぐ母親たちの熱い視線を感じた。


「銀座かあるいは新宿か」高校時代の女友達たちの久しぶりの飲み会。今回の論議は銀座・新宿バトルであったが、どんな内容であっても白熱した論議を繰り返すこの関係がいいのだと思う。


「チェリーブロッサム」常習犯の老人の見ていたものは・・・・・


「ハチの巣退治」ハチの巣退治であって、ハチ退治ではないと言うジョーがグッド。


「パパイヤと五家宝」主婦であるなら、この気持ちよくわかる。毎日節約していてもちょっと贅沢をしてみたい日というのはある。そして、牛脂には笑えた。


「夏の森」カブトムシが樹皮に前肢が触れた瞬間の変わり身にはびっくり。自分もこのカブトムシのように力を温存していると思うことで今の生活を続けていられるのかも。


「ドバイの@建設中」かけひきのあった結婚話がが決まり、婚前旅行に行くことに。抜け目なく行動していたつもりでも、相手にばれてた?お互いだましあっていた部分はあったにしろ、結果オーライ?


「あの角を過ぎたところに」偶然の出会いがこういう決心をさせるとは!


「二人姉妹」わだかまりがあっても、そこは姉妹。共通の好きなことに関しては仲がいい。


「太陽のうた」国境を越えやってきた土地。住んでいるここが自分たちの土地だという。近くで戦いがおこり、配給も少なくなり生活は楽ではない。それでも家族がいることに幸せを感じている。なんと謙虚で力強いのだろう。


「彼らが失ったものと失わなかったもの」失ったものより失わなかったものの方が大きかったと思う。空港での英国人の夫妻の行動は紳士的だった。


女性の立場から、ちょっとした一瞬を捉えているが、同じ場所に居合わせたような感覚に陥り、そのときの様子が目に浮かんだ。


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