誘拐児

翔田 寛 講談社 2008年8月



<第54回江戸川乱歩賞受賞作

昭和21年、帰らなかった誘拐児。悲劇はそこから始まった――。
緊迫の推理。かつてなく切ないラスト。圧倒的筆力で描く興奮、そして涙。

終戦翌年の誘拐事件。身代金受け渡し場所、闇市。犯人確保に失敗。そして15年後、事件がふたたび動き出す――。人間の非情と情愛を見つめる魂の物語。>


昭和21年に起こった誘拐事件。犯人を取り逃がし、誘拐された子供は行方不明のまま。
15年後、谷口良雄は、お袋が亡くなる前に口にした言葉が真実かどうか確かめるために動き出す。看護婦で良雄の恋人の幸子は、良雄の様子がおかしいことに気づく。一方、ハンドバッグと紙袋を持った下條弥生は、何者かにおそわれる・・・・・・・・・・

誘拐事件の現金引渡し場面は、どうなるのかとドキドキ。闇市や当時の様子がうまく反映された内容でひきつけられた。

良雄の詮索と弥生の事件が交互に描かれ、これが、15年前の誘拐事件へとつながっていく。良雄の懸念の内容は、題名からしておよそ予想がついてしまうのは残念なことだが、事件がうまく絡まって、真犯人へと結びついていくあたりは、うまくできていたと思う。


ただ、刑事の特徴がつかみにくく、だれがだれがわからなくなってしまった。
お気に入り度★★★