銀河不動産の超越


森博嗣 文藝春秋 2008年5月



高校を卒業して高橋は、しかたなく銀河不動産に就職する。銀亀社長と事務員の佐賀さんだけの会社だ。高橋が担当した間宮さんに見せた大きな物件に、間宮さんは、「私がここを買ってね、君に貸してあげようか?」と、高橋は今までと同じ家賃でここに住むことになる。広すぎる家に住みことになった高橋だったが・・・・・・・


音楽関係の丹波さんは、芸術家(彫刻家)の島田さん、作家の山田さん、年寄りだけのアミューズメントを作ろうとしている池谷さんなどが、銀河不動産に物件を探しに来る。現実にはこういう人いないでしょという人たち。一言でいえば、凄まじい人たちなのだ。今度はどんな人がやってくるのかとわくわくしながら読んだ。


高橋は、成り行き上、大きな家にすむことになったが、この家の魅了か、高橋の人の良さからか、ここに人が集まってくることになる。

<なるほど、場所と言うものは、個人が所有しているうちはただのスペースだが、、大勢に人間の介入によって活用され、社会の基盤となる>

高橋とこの家に集まった人たちが繰り広げる世界が奇妙だけど、暖かい感じがする。


元気がない。気力がない。どちらが好きと聞かれてもどちらともいえない。覇気がない。そんな高橋のような人間が、流されるような人生を送っていたとしても、まじめに生活していれば、幸せになれる。そんなことをふと思った。


佐賀さんの観察力が鋭い!


お気に入り度★★★★