笑う招き猫


山本幸久 集英社 2003年12月




シアターQの劇場で漫才をする29歳の新人、アカコとヒトミ。漫才を見にストカーのように毎週あらわれては笑いもせず、メモを取り続けているデブの永吉から、桃餐(トウサン)プロへスカウトされる・・・・・・・・・


身長150cmと長身、体重60kg。血のつながらない祖母頼子さんと優雅に暮らすアカコ。身長180cm、バイト生活をし、移動手段は愛車レットバロンというヒトミ。アカコの一緒に漫才をしようという言葉に、OLをやめ、漫才を始めたヒトミだった。


容姿も性格も環境もぜんぜん違う二人だが、お互いを思いやる気持ちがあるからこそ、コンビが組めるのだろう。


コンビの中での衝突、自分たちの漫才に対しての不安。先輩芸人たちとの軋轢。桃餐(トウサン)プロの方針とのずれ・・・・・・・・・・・・・いろんなことで悩む二人だったが、その悩みと向かい合い、成長していく姿がいいな。


そしてその二人の成長を見守ってくれる永吉や頼子さんの存在がいい。


漫才に対する考え方、テレビで人気者になるより、生涯、舞台にたって漫才を続けていくという姿勢がいい。テレビのお笑い番組に出場するうち、本来の漫才がおろそかになってしまう芸人たちや、漫才もせず、お笑いタレントのようになってしまった芸人たちに対し、夢は武道館、カーネギーホールで漫才をすることと言い切るアカコとヒトミがいい。この二人なら、テレビに出場することがあっても、本来の目標を忘れずにいてくれるような気がする。



漫才仲間の乙の子供、エリちゃん。小さいのに、無理していたなあ。だからといって、簡単に、一緒に暮らそうなんていえないんだな。エリちゃん、幸せになってほしい。


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