鼓笛隊の襲来
三崎亜記 光文社 2008年3月
赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。老人ホームに入居している義母もつれてくるが、この襲来に、避難しないで家でいる家族だったが・・・・・・・
ありそうでありえない設定が奇抜。
台風ではなく、鼓笛隊が襲来する。ギャラリーに展示されている自分の持ち物。覆面被ることが労働者の権利。すべり台が生きている象。背中についているボタン(突起型選択装置)。異世界にある窓。上空1千メートルに浮遊する街。校庭の真ん中にある家。忽然と消えた列車。
羅列してみたが、これだけでは何のことかわからない。そう、最初は、この設定に戸惑ったが、読み進むうち納得がいくようになる。
作者は、心にできるちょっとした歪みを目に見えるもので表しているのだと思う。今ある世界をひとつとして、もうひとつちょっとズレた世界の存在を感じさせる物語だ。
家族が一緒にいることのほほえましさ、恋人を失った失踪感、覆面をがぶっているはずがいつのまにか被った状態が自分自身なっていくこわさ。家族全員の存在を消されてしまうおそろしさ。場所が離れていても同じ星空をながめる切なさ・・・・・
この短編集の中にたくさんの想いが詰まっていた。
「彼女の痕跡展」「覆面社員」が好き。
気になったのが、突起型選択装置。あのボタン、押したら、どうなるのだろう?
お気に入り度★★★★