雷の季節の終わりに

恒川光太郎 角川書店 2006年11月




穏は、海辺の漁村を中心とした一帯の名称で、海と畑からとれるものを基本として生計をたてている。書物にも記載されてないし、地図にも載っていない。穏には、冬と春の間に雷の季節がある。 その穏で暮らす賢也は、姉が失踪した時に、風わいわいという物の怪に取り付かれていた。賢也は、ある秘密を知ったことから、穏から追い出されることに・・・・・・・・・・・


異形がいるこんな世界の話は、今まであまり読んだことがないのだが、違和感なく入り込める。作者は、こういう世界を書くのが、うまい。読み終わってみると、本当に穏があるような気分になる。


穏という村の慣習や古よりの決まりなど、どんな村なのか、それを知るだけでワクワクする。それに加え、登場人物の穂高、遼雲、墓町の門番、ヒナ、ナギヒサ、キミオ・・・・・・・・・・・彼らが、どのように賢也と関わってくるのかと興味をそそられる。


途中から挿入される茜の話。穏とは違う場所。ここが現実の世界。ここでおきている母親の存在はこわい。これが人間の本性なのか。


そして、ラストには話がうまくつながった。賢也の冒険、おもしろかった。風わいわいって、愛嬌がある不思議な物の怪だったなあ。



気に入り度★★★★