夜明けの縁をさ迷う人々


小川洋子  角川書店 2007年9月





夜明けの縁をさ迷うというのは、正常と異常の境目をうろつているような人たちってことかな。ちょっとこわいような、切ないような、淫靡なような、ありえないようでありえるような・・・・・・・読み始めは普通なのに、読んでいくうち、現実と違う世界に入っていくような感覚だ。


「曲芸と野球」椅子を組み合わせて曲芸をしているのが目に浮かぶよう。

「教授宅の留守番」冷凍ブリの解体・・・・・おそろしかった。

「イービーのかなわぬ望み」エレベーターを住処としてしているイービーの話。これは好きだな。

「お探しの物件」風変わりな物件ばかり。部屋が住み人を探していて立場が逆でおもしろい。

「涙売り」自分の身を削って好きな人のために涙を流すとは、なんて切ないのだろう。

「パラソルチョコレート」共通な秘密を持っている裏側の人がいると思うと、どんな人なのかとちょっとわくわくする。

「ラ・ヴェール嬢」足裏マッサージ師が聞いた不思議なお話。

「銀山の狩猟小屋」サンバカツギってどんな生き物なのだろう?

「再試合」果てのない試合、いつまで続くのか。


ひっそりと生きる人たちの静かな時の流れを感じた作品。

お気に入り度★★★