ピアニシモ  再読


辻仁成  集英社 1990年1月


父の転勤で転校を繰り返すトオルは、いく先々の学校で苛めにあい、また両親からの愛情も薄く、自分にしか見えない存在”ヒカル”という人物を作り上げ孤独を癒していた。「NTT伝言センター」で知り合ったサキという女の子と悩みを打ち明けあい、心はだんだん開いていくが・・・・


ピアニシモ・ピアニシモ  」を読むにあたり、再読した。


馬車馬のように働き家にはほとんどいない父親をあの人と呼び、トオルを溺愛する母親をあんたと呼ぶ。トオルは、父親から逃げて母親をいびる毎日。愛情が薄い家庭で育ったせいか、小さいときから、心の友、ヒカルはいた。悪いことをするのはヒカルで、トオルはそれをとめることもなく、傍観している。ヒカルは、自分の心のもう一つの表れなのだろうが、トオルは気づいていない。


学校で先生たちは生徒に無関心をよそおい、授業を続け、生徒は自分がいじめられないために人をいじめる。孤独なトオルは、ヒカルと二人で街の中で、ヒーローをさがす。


なんと乾いた毎日なんだろう。トオルの孤独が突き刺さる。そんな、トオルの唯一の心の慰めはサキとの電話だった。それなのに・・・・・・・・


ラスト、トオルが現実を受け入れようとする姿が圧倒的な感動を呼ぶ。


お気に入り度★★★★