使命と魂のリミット


東野圭吾 新潮社 2006年12月



氷室夕紀は、父健介を大動脈瘤の手術で失ったことから心臓外科医を目指し、今は研修医として、西園陽平教授のいる帝都大学病院の心臓血管外科に勤務していた。一方、直井穣治は、ある目的の為、帝都大学病院の看護師、真瀬望に近づき、入院患者の島原総一郎のことや病院内の様子を探っていた。ある日、直井穣治は、帝都大学病院に、脅迫状を送る・・・・・・・・



腕のいい西村教授が、氷室夕紀の父健介の手術は、なぜ失敗したのか?直井穣治の目的は?と、疑問を持ちながら読む進むうち、、帝都大学病院に脅迫状の捜査のために来た七尾刑事から、夕紀は、父親の知られざる過去を聞かされ、話がからみあっていった。


犯人もわかっているし、どんでん返しがあるわけでもないサスペンスなのだが、話がどのようなつながりをみせていくのか、目が離せない。夕紀の苦悩や犯人の自分の意志を実行するために関係のない人を巻き添えにすることに対するためらい、緊急時の病院での医師や看護士たちの働きなど読み応えがあった。



<人間は生まれながらにして使命を与えられている>



氷室健介の言葉なのだが、人それぞれどんな使命があるのか、それを果たそうとする人たちの人間模様を読むのがおもしろかった。


作者が、医療を題材にするのは、初めての試みだが、手術の場面は、医療のことをあまり知らない読者にも、わかりやすく、緊迫感があった。



お気に入り度★★★★