楽園


宮部みゆき 文藝春秋 2007年8月


      
楽園〈上〉/宮部 みゆき
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楽園 下/宮部 みゆき
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前畑滋子は、交通事故で小学生の息子等を亡くした萩原敏子から、等の特殊な能力について、調べて欲しいという相談を受ける。等の描いた絵の中に家の中で寝ている灰色の肌色の少女が描かれていたが、その家は、火事が起こり、その家の床下から、少女の死体が発見されたのだ。滋子は等とこの家との接点について調べていくが・・・・・・・・・


「模倣犯」の時“の殺人事件で、容易に立ち直れないほどのダメージを受けた前畑滋子”とあるけれど、模倣犯の内容をすっかり忘れている。読み返しておくべきだったかな。

ともあれ、あの殺人事件では、さまざまな人たちが苦しんだ。滋子もそのひとり。9年経った今でも、滋子の中ではまだ終わっていないのだ。ライターは書くことが仕事だけど、書く事のできないこともあるのだと感じる。


40歳を超えての息子で母の手ひつで育てていただけに、等に対して、深い愛情を持っていた敏子。敏子が、等が亡くなっても等のことをずっと思って生きていたいという思い。娘茜を殺して埋めたその家に、茜の妹の誠子と3人で暮らしてきた土井崎一家。時効を迎えたのに、自首した土井崎茜の両親。なぜ、今頃になって自首してきたのか。両親の自首によって、離婚した茜の妹誠子。彼らの関係、いろんな疑問を滋子は丁寧に調べていく過程が、滋子の心の葛藤とともに、事細かに書かれていた。


身内の中に出来損ないがいたとしたら、どうすればいいのか。題名となっている楽園の意味を知ったとき、とても切ない気持ちになった。


「模倣犯」のような派手さはないが、悲劇にみまわれた人たちの心情が、私の心に響いた。


そして、敏子の暖かさが、気持ちをほぐしてくれるように思う。

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