赤朽葉家の伝説


桜庭一樹  東京創元社 2006年12月


辺境の人に置き去りにされた万葉は、村の若夫婦に育てられるが、製鉄業で財を得た赤朽葉家の嫁となる。万葉には、未来のことが見える千里眼の能力があった・・・・・・・


現代史と共に、赤朽葉家の3代を描いた濃い内容の話だ。

まずは、万葉。辺境の娘で字が読めないし教養もない。しかし、赤朽葉家の嫁として迎えられる。これも運命だろうか。万葉は、未来を見ることができ、千里眼と呼ばれていた。未来がわかってしまうのも、よし悪し。出産の時、その子の一生をいてしまうなんて、やはりやりきれないだろうな。


次に万葉の子ども、毛毬。レディースとして名をとどろかせる。こわいものなしといった感じだ。けれど、引き際はわかっていて、引退したら、漫画家となり、若くして死ぬまでずっと書き続ける。この毛毬の人生も波乱万丈だ。

万葉には、「ひろわれっ子」「いじめっこ」と言い合う、出目金の存在。

毛毬には、親友「東大。外交官。夜だけ。女豹」と言っていたチューコの存在。

彼女たち親友の存在を忘れてはならないように思う。


この、個性ある女性たちに対し、瞳子は現代ではどこにでもいそうな普通の女の子。自分のやりたいことが見つからず、仕事も長続きしない。しかし恋はしたい。


<二人は輝ける過去であり、歴史であり、わたしのルーツなのである。この平凡な、若い女でしかない、わたしの。彼女たちのことを考えるとき、わたしは、自分にもなにがしらの価値があるように感じるのだ。>


母や祖母にこんな人たちがいると、自分もなにか特別のものを持っているような気持ちになるのかもしれない。要はこれからってことなのだろう。

最後の章は、謎で締めくくられて、うまくまとまっていた。

万葉、毛毬に加え、変な名前の泪、毛毬、鞄、孤独。百代は、寝取りに命をかける女だったりと、強烈な登場人物たちばかりだが、それが、ごたつくことなく、うまくかみあって、三代記となっている。実際の出来事も取り入れて書かれているところもよかった。

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