ミハスの落日
貫井徳郎 新潮社 2,007年2月
「ミハスの落日」
ジュリアンは、製薬会社創業者のオルガスから、ミハスまで、来てほしいという電話を受け会いに行き、昔のジュリアンの母の話を聞く・・・・
これも密室殺人になるのか?
「ストックホルムの埋み火」
ビデオショップで働くブラクセンは、客のクリスと気さくに話をするようになった。クリスがブラクセンの映画の誘いをことわったことから、クリスの行動を監視するようになる・・・・・
刑事としての名声の高い父にコンプレックスを持つ同じ刑事のロルフとブラクセをシンクロさせて描いているので、物語に深みを増している。
「サンフランシスコの深い闇」
保険会社で働くおれは、苦手なスティーヴィー刑事から、フランシス・オルコットの夫の保険金ヶいつもらえるのかという問い合わせから、死因について調べ始める・・・・・・
過去に二度も夫を失っているフランシスだったので、なにかありそうだったけど、こんなことだったとは!
「ジャカルタの黎明」
ディタは、元夫、アグンの借金の為、娼婦の仕事をしていたが、その地区で、娼婦だけを狙った殺人事件が次々と起こる。そんな時、アグンが殺され、ディタが疑われる。
インドネシアでは、私たち日本人では考えられないほど貧乏な人たちがいて、若い女の子が、借金の形になるというのは、ショック!この物語もそんな女性を描いていて、物悲しい。しかし、客としてきたトシのような男性と、一時でも、心通うことができたのは、救いか。
「カイロの残照」
旅行ガイドのマフムードは、カイロに一人できた女性の旅行客ナンシーの担当になる。ナンシーは失踪した夫を探しに来ていて、マフフードを個人的に雇う・・・・・
最初の段落に<永遠に許されない重い罪>とあったけれど、ほんの些細なことから始まってしまった。イスラム社会では、経済力がつかない限り好きな女とも、結婚できない。このことが悲劇を生んでしまったのだ。
実際に海外に旅行をしただけあって、風景描写が丁寧で、旅行したような気分になる。外国ならではの話になっているところがいい。
トリックもそれぞれ楽しめるけど、なんといってもラストがいい。暗い事件でも、ほっとした気持ちになれるところがよかった。
お気に入り度★★★★