サマーバケーションEP


古川 日出男  文藝春秋 2007年3月

僕は冒険するために井の頭公園に来た。そこで、ウナさん、カネコさん、イギリス人のカップルと出会う。神田川は隅田川に注いでいる。その先にある海を見たいと一緒に出発する。


井の頭公園から、海まで歩く。新しい人が加わったり、離れたりしながら、駅、川、橋などを経て進んでいく。ただそれだけの話なのだ。ただ、歩くという行為。途中自転車に乗る場面もあるけれど、みんなで歩いているだけなのだ。でも何か新鮮。こうして、歩くことで、いつもとは違った風景を見ることができるような気がする。また、新しい人との出会いがある。降り注ぐ太陽の下で、やわらかい風を受けながら、こんなふうなバケーションを過ごすのもいいなあと思う。


僕は顔を覚えられない病気。声、匂い、温度で、その人見分けるわけだけれど、顔で区別できない分、その人の本質や気持ちがわかるように思う。二十歳を過ぎてやっと自由が認められたとあるから、見るものすべてに感動している。こういうピュアな気持ちって私たちは忘れているような気がするな。

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