見えない誰かと


瀬尾まいこ  祥伝社 2006年12月


初エッセイ。瀬尾さんは、中学の先生だということは知っていたけど、それまでに、講師として働き、疲れて休んだ一年間を過ごしたってこともあったのを知った。とりたてて、大きな出来事ではない、何気ない日常を綴っているだけなのに、それを言葉にするのがうまいなあ。


<私のそのときの毎日を楽しくしてくれている人は、確実にいる>


瀬尾さんは、人とのつながりを大切にしていることが感じられた。それは、働いた職場の校長であったり教頭であったり、教えてもらった先生であったり。また、家族であったり、親戚であったり。パートのおばちゃんであったり、親友であったり、生徒であったり・・・・・・・相手の良いところを見逃さない作者の感性って素敵だと思う。


<はじまりやきっかけはめちゃくちゃであっても、いくつかの時間を一緒に過ごすと、何らかの気持ちが芽生えるんだなあって思う>


出会いを大切にしている瀬尾さん。決していいことでなくても、こんなふうに感じられる、いいほうに目を向けられるのも、素敵なことだ。


<進化する母親>と題して、母親のことが語られている。

子どもたちの母親として、絵に描いたような母親をしていたと思ったら、キャリアウーマンになってからは、子どもはほったらかしで、バリバリ働いて・・・・。そういう環境によって、自分自身を発揮できる人ってすばらしいと思う。こどもをほったらかしているようで、形は違っても、愛情をいっぱい注いでいたんだろうな。そうでなかったら、瀬尾さんのような優しい子どもには育たないもの。


作者の小説には、優しさがあふれている。それは、このエッセイにもにじみ出ていた。


海の人や生徒会委員、図書委員など、今までの小説の中に、この人のことを書いたんだなあと思える人たちが登場していた。「強運の持ち主」という言葉ににんまりしたりしながら読んだ。


なにより、生徒が大好きな先生。こんな先生なら、生徒からも好かれそうだ。


<楽しくやれば楽しいんだ>

楽しくやるために、もっとがんばらなくちゃと思う作者を私も見習おう。
この本を読んで、元気をもらった気がする。

お気に入り度★★★