嗤う闇


乃南アサ 新潮社 2004年3月


巡査部長に昇進し、警視庁第三機動捜査隊から隅田川東署に異動した音道刑事が取り組んだ4つの事件を描いた短編集。


派手さはないけれど、地道に事件に取り組んでいる音道刑事の姿が、音道の日常の生活とともに描かれている。


「残りの春」では、年下のキャリア警部補とコンビを組んでの捜査。年下なのに、上司との捜査は、やりにくいだろうに、その様子が書かれている。このように、事件だけでなく、人間関係を見るのが面白い。

「木綿の部屋」では、滝沢の娘夫婦が登場。刑事としてではなく、親としての滝沢の姿を見ることができた。男女の関係は人にはわからないもの。音道のように自分の気持ちを抑えられる女性ばかりではない。滝沢も、娘のことが心配で仕方がないだろうけど、どうすることもできなく、歯がゆいのだろう。

「嗤う闇」は、レイプ事件。女性の立場から、親身になっている音道の姿があった。また、昂一が、事件の巻き添えを食う場面があり、おこっている昂一の姿が目にうかんだ。


風の墓碑銘」を先に読んでしまったが、それまでにこんなことがあったのかと、音道や滝沢のことをより知ることができてよかった。

お気に入り度★★★