ささらさや  加納朋子 幻冬舎 2001年10月




サヤの夫は、交通事故で亡くなってしまう。まだ首の据わらないユウ坊を育てるサヤは、夫の両親や姉夫婦からユウ坊を養子にほしいといわれ、逃げるように以前叔母が住んでいた佐々良に引っ越していく。サヤの夫は、頼りないサヤをほっておけず、誰か生きている人の姿を借りて助けに来る。

一話づつに日常における謎が含まれている。世間知らずで、甘ったれで弱虫ですぐにメソメソ泣いてしまうサヤが、周りの人たちの助けを借りて、夫の助けなしでやっていけるまでを描く。


「馬鹿っサヤ」と困ったときにでてくる夫の、サヤを見守る優しいまなざしがいい。それに、老女三人やエリカの遠慮のない会話がポンポン飛び出して読んでいて元気が出るし、それでいてサヤやユウ坊を大切に見守ってくれるこの人たちも素敵だ。心優しいサヤに“しっかり生きるんだよ”とそっと声をかけてあげたいようなさわやかな印象だった。




てるてるあした 加納朋子 幻冬舎 2005年5月


両親が借金を作り、高校に合格したのに、行けなくなった照代は、母に言われて、ひとり、佐々良の町の親戚の久代を訪ねる。元教師で、魔女といわれている久代の家に居候することになった照代だが、その家で幽霊に出会う。

「ささらさや」の人たちが登場する。サヤは頼りないほどやさしくて、エリカや老女たちはますます元気?少しも変わっていない佐々良の人たち。


今回は、照代が主人公。父が嫌いで、母が嫌いで、みんなも嫌いで、そういう自分が一番嫌いだという照代。しかし、佐々良の町で暮らすうち、あたたかい心に触れて、照代の気持ちが変わっていく。こういう人とのふれあいを描いた作品好き。こわれたものは、形を変えて生まれ変わることができる。そう信じられることが素晴らしいことだと思う。


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