夜をゆく飛行機


角田光代  中央公論新社 2,006年7月


谷島酒店の四姉妹、有子、寿子、素子、里々子のうちの寿子が、自分の家族のことを書いた小説「下町のロビンソン」が、小説飛雲新人文学賞を受賞する。その頃から、家族に変化が起き始める・・・・・・・・・・


家族が、けんかをしながらも、いっしょに仲良く暮らす日々。寿子が、書いた小説のような毎日が、続くことを里々子は望んでいたのだと思う。小説は、たとえ、事実のことを書いていたとしても、TVドラマのように、成長しない登場人物たちである。しかし、実際の生活は、同じところにとどまってはいないし、大切な人を失うこともある。それが、現実。


末っ子だと言うことで、店のことや家族のことを相談されるわけでもなく、一人取り残されたような里々子は、生まれなかった子どもぴょん吉に話しかけ、物干し台のベンチで、空を見上げているのだ。


家族のみんなは、いいかどうかは別として、自分の行く道を見つけ、家から飛び出していく。そんな中で、里々子だけが、取り残されたような感じを受ける。


「世の中って、全部そんなふうにきちんきちんと型にはまるようなことじゃない」

世の中は、思うとおりにならないし、割り切れるものじゃない。


家族が崩壊していく中で、里々子はいらだち、さみしさをかかえながら、成長していく様が、日常を通して感じられた。


家を出て行ったとしても、家族は家族。いつまでもつながっているものだと思う。

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