赤い指


東野圭吾 講談社 2006年7月



昭夫は、妻の八重子から電話を受け、帰ってみると庭に・・・・・・・・

一方、松宮は、母が以前世話になったおじ加賀を時々見舞っているが、彼の息子は、見舞いに来ない。その息子と一緒に捜査をすることに・・・・・


この小説を読んでいくうち、ニュースでもよく聞くような内容で、認知症の老人を抱える家族、少年犯罪など、現代ではどこで起きるかもわからないような内容に思えた。


息子がしてしまった犯罪を家族がどう処理するのかを描いた作品。犯人は誰かがわかっているし、昭夫が誰を犯人に仕立てようとしているのか、察しがつくので、ミステリーファンには物足りなさを感じる作品かもしれない。しかし、内面を描いている点で、評価できる作品だ。私にはラストの衝撃が大きかった。


なんでも家族のせいにし、閉じこもっている息子。自分の犯した罪でさえ、家族のせいにしてしまう。義母とは折り合いがあわず、息子を過保護に育ててしまった八重子。息子をかばおうと必死な様子がうかがえる。家庭や育児から逃げていた昭夫。息子に最初は自首させようとするが、これからの家族の一番いい方法を考える。今まで離れ離れだったのに、偽装工作することで、夫婦が団結する。皮肉な話だ。こんな偽装工作してもすぐにばれてしまうだろうことはわかりそうなものだけど、実際、こんな立場になったら、逃れたい気持ちでこういう考えになるのかもしれない。


「赤い指」の意味がわかったとき、親が子供をもう気持ちに胸が熱くなってしまった。また、加賀刑事の温情ある捜査に心打たれた。


余命いくばくもない加賀刑事の父親に、加賀は、会おうとしない。自分のこととなると、冷たいのだなと、加賀刑事が好きなだけにちょっと幻滅しかけたけど、そういう事情があったとは!ほっとした。


お気に入り度★★★★