エンドゲーム 常野物語

恩田陸  集英社 2006年1月


父が、失踪して10年が経つ。大学4年生の拝島時子は、母暎子が倒れて眠り続けているという連絡を受ける。母は「裏返された」のか?冷蔵庫にいつも張ってあった電話番号に連絡を取ると「洗濯屋」と称するする火浦が現れる・・・・・・

「光の帝国」「蒲公英草紙」に続く遠野一族を描いた第三弾。


「裏返す」ことをしなければ、「裏返され」てしまう。「あれ」と戦ってきた遠野一族。今までは脇役であった遠野一族が、ここでは主役。彼らの悩みや苦しみに触れている。今まで、静かに暮らしてきた遠野であったので、この物語は、ハードで、ちょっと違う印象を受けた。


暎子は、失踪した夫の帰りをずっと待っていた。時子は母と二人で、助け合って生きてきた。こういう人たちが主人公なので、共感して読むことができた。


今回始めて登場した「洗濯屋」とは、いったい、どんなことをするのか?そして、あれとはいったい何なのか?話が入り組んでいて、細かいところはわかりにくい部分もあったが、驚きの連続。さすが!


時子が異物として見えていたボーリングのピン、これが迫ってくるような感覚はとてもこわかった。


過去の苦しみやトラウマを消してしまうこと、それが本当にできたとして、いいことなのかどうなのか?記憶を消すことは、人格までも変えてしまうようで、これもこわい。非現実な話の中に、問題を提起しているように思った。


わかったようでわからないような不思議な世界。しかし、いったん、この世界に入り込むと夢中で読んでしまう。今回は、時子の能力は、この本の中では発揮されていなかったので、いつか、時子の活躍を読んでみたいな。

お気に入り度★★★