陽の子雨の子


豊島ミホ 講談社 2006年3月


中学2年生の夕陽は、担任の先生の同級生だという雪枝と知り合い、メールを交わすようになる。初めて、雪枝の家に行ったとき、15歳のときから雪枝の家にいて4年にもなる聡が、後ろ手に縛られ押入れの中にいた・・・・・


お金はあっても、何か物足りない雪枝と、家出をしてきて、見つかるといけないとずっと雪枝の家にかくまわれていた聡。雪枝の家は、普通とは違った世界がそこにあった。そこに、普通の夕陽が入り込むことにより、何かが変わり始める・・・・


多くの人が普通の生活を送りたいと思っている。けど、だれでも、間違いや、不幸や、行き違いや、どうしようもない悲しみがやってくることはある。雪枝や聡に降り注いだような不幸が、自分自身にも降りかかってくることは、なきにしもあらず。この世の中には、灰色の点がうごめいている世界なのだ。


夕陽は、普通の中学生。雪枝や聡とは、異次元の世界にいるように思える。彼女らと知り合って、夕陽は戸惑いを見せるものの、最後にだした自分なりの結論が、中学生らしく、好印象だった。


いくら不幸があったとしても、なんにも働かずにいる雪枝と聡に反発を覚えるはずなのに、縁側で、二人がスイカを食べていつ風景が、何かほのぼのと思える、不思議な魅力のある作品だった。でも、この二人、これからどうするのだろう?

お気に入り度★★★