代筆屋


辻仁成 海竜社 2004年10月


カフェ レオナルドの二階に住む私は、小説を書くかたわら、代筆を頼まれてしていたが、レオナルドのマスターが筆不精の常連客に私のことを吹聴したことにより、多くの依頼人が来る・・・・・・・


「名前も分からぬ人へ向けた恋文の書き方」から始まり、いろいろな状況の人たちに対し、どのような代筆の手紙を書いたかが書かれている。


電話やメールの時代ににあっても、自筆の手紙をもらうとうれしいものである。気持ちを伝えるために相手のことを考え心を込めて書くからこそ、手紙は価値がある。でも、書くとなると億劫で、どのような言葉で、相手に自分の気持ちを伝えればいいのか迷ってしまう。そんな時、この物語を読めば、参考になる。ちょっとこんな手紙は恥ずかしくて書けないなあというのもあったけれど、この本を読んで、手紙を書きたくなったのは事実だ。


反面、手紙は自分で書くからいいのであって、代筆を頼むことが、いいことなのかとも思う。しかし、手紙は一つのきっかけにすぎない。それからのことは、自分自身で決めていかなければならないことなのだ。


長年連れ添った夫に不満があって、別れたいという老女に対して、代筆屋が話を聞いているうち、逆に、今までのいい出来事が思い出されるという話はいいなあと思った。

お気に入り度★★★