まほろ駅前多田便利軒


浦しをん 文藝春秋 2006年3月


まほろ市で便利屋の仕事をする多田啓介は、仕事の帰り、バス停で偶然高校の同級生行天春彦に出会うが、行く当てのない行天は、多田の仕事場に居候する。二人は仕事であずかった犬のチワワから、騒動に巻き込まれる・・・・・・・


行天という名前だが、まさに仰天させられることばっかり。何を考えているのか、どのような行動に出るのか、まったく見当がつかない、すごい人物だ。この行天が、普通(?)の多田と、組むことにより、事件が解決していくお話。


行天にも、多田にも、過去があるわけで、事件と絡めて、過去のことがうまくミックッスされている。多田は、過去にずっと悩まされ続けて、かたくなに、殻に閉じこもってひとりでいようとしていた。けれど、行天という人物と出会ってから、変わっていく、そこが、またいい。


また、この小説には、親子関係のこととが書かれている。子は親を選べないというけれど、行天にしてもしかり。少年由良にしてもしかり。でも、由良に対して、多田がいった言葉がよかったなあ。


<だれかを愛するチャンスはある。与えられてなかったものを今度はちゃんとして形で、おまえは新しくだれかに与えることができるんだ。>


それと、木村家での出来事。血のつながりとは、家庭とは・・・と考えずにはいられない。


行天の言葉<不幸だけど、満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはないと思う。>

わかるような、わからないような・・・・・


それにしても、便利屋の仕事っていろいろあるもんだなあ。

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