雪屋のロッスさん

いしいしんじ メディアファクトリー 2006年2月




さまざまな職業の“人たち”を主人公に、時にはポリバケツのような“もの”を主人公にしたお話。短い話なんだけど、ひとつひとつの話が、輝いている。


「なぞタクシーのヤリ・ヘンムレン」なぞなぞを出すのは、人を笑わせるため、考え込ませるためじゃないと、事故で身をもって知ったヤリ・ヘンムレン。まわりのことを考えて、今日も出すなぞなぞが。人を楽しませ、明るくしてくれる。


「調律師のるみ子さん」事故で、手指を失って調律しになったるみ子さん。事故にさえあわなければ、音楽をうまく弾けただろうに、その悔しさからか、音をはずして、調律する。そんな時、ある老人と出会って・・・・自分を取り戻していく姿がよかった。


「大泥棒の前田さん」何でも盗んで手に入れていたが、盗むものがなくなった前田さん。彼が、次に盗んだものには驚いた。気転がきいてて面白い。


書き出したら、30全部の感想を書いてしまいそう。題名を見るだけで、話が思い出される。民話やおとぎばなしのよう。こわい話や、人のいやな面を描いたあったけど、人のやさしさや思いやりを感じる。スパイスが効いていて、読んでいて飽きない。どの話も一つ一つ大切にしたい。

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