クローズドノート
雫井脩介 角川書店 2006年1月
大学生の香恵は、自分の部屋を見上げる青年が、目にとまる。その青年が、アルバイト先の文具店に万年筆を買いに来る。また、香恵は、自分の部屋に忘れられたノートを見つけ、読み始める・・・・・・・
伊吹先生の先生としての心構えが書かれたノートが、とてもいい。
クラスを家族と思うように話したり、太陽通信を作ったり、伊吹賞を作って子供たちをほめたり、また、不登校の子と接したりする様子が、手に取るようにわかり、先生として真剣に子供たちと向き合っている姿が目に浮かぶようだ。
そして、伊吹先生の恋は、大学生の香恵の恋とダブって、切なく描かれている。香恵のキャラが、“天然”であるところが、また、好感が持てる。
筋書きは最初のほうで読めてしまう。それでも、最後のほうは、涙が出る。
<悠久の時のたまたま同じ頃に生を受けて、それぞれの人生を送るうち、偶然に交錯して、その瞬間、お互いの生を祝福し合えた。>
すれ違っていたとしても、知らないうちは、知らない人。意識した時から、知り合いになる。その出会いを大切にしたいなあと思う。
この本のあとがきには、作者が、この本を書いたあつい想いがのべられていて、感動した。
お気に入り度★★★★