パラレル 長嶋有
文藝春秋 2004年6月
向井七郎は、以前、有名なゲームを手がけたが、今は業界から遠ざかっている。大学時代の友達津田とは腐れ縁で、津田に付き添って、キャバクラにいく。離婚した妻からは、メールや電話がかかってくる。・・・・・・・
世間のスピードとはひとつ、ずれたところにいる七郎の日常を描いている。
別になまけものというわけでもなく、普通の生活。七郎は、紅茶を入れるのにも、手順がある。こだわりを持つ男なのだ。七郎は自分に誠実なのだと思う。
別れた妻は、好きになれない女性だ。自分から去っていったのに、謝罪も、何もなく、メールや電話が送れるんだろう。無神経な女性。しかし、彼は、友として彼女を受け止めている。一夜連絡がないだけで、死ぬほど心配する七郎に、細やかな心情を感じる。
七郎は、津田の女から病院についてきてほしいと誘われたりする。無害で信頼できる男性ってことか。
結婚式のスピーチに“結婚とは文化である。”
“夫婦円満の秘訣は信じることです。”
というのがあった。なるほど、そうかも。
長嶋有の独特の世界を味わった。
お気に入り度★★★