魔王  伊坂幸太郎 講談社 2005年10月




考えて、考えて答えを出す安藤。ある日、自分の思っていることを、相手にしゃべらせることができるというの力が自分にあることを知る。日本の未来に不安を感じた安藤は、新しく政権を握ろうとしている犬養の演説の場へ向かうが・・・・


ファシズムや憲法、日本とアメリカや欧州諸国との関係などを書いた今までとは違う雰囲気の本。政治批判は、過激な内容だったと思う。
たとえば、「汚職や不祥事、選挙の敗北、それらの責任で辞任した首相はいるが、国の未来への道筋を誤った、と辞任した首相はいない。」なんて、事実だし、「最初は大騒ぎでも、二度目以降は興味なし」とは、日本国民の心理をよく見抜いたことを書いてるなと思った。


自分だけが特殊な能力を持っているんだと思っていても、しゃべらなければわからないわけで、安藤の他にも、特殊な能力を持った人がいて、その人と安藤が、どのように行動し、政治がどう変わっていくのか、とても興味を持って読んだ。また、ちょっとした会話からヒントを得て、安藤の弟の潤也はどう行動にでるか、とわくわくしながらも・・・


でも、この話は完結しない。魔王になりうるのは、政治家の犬養だと思ったけど、ほかの誰かになりうる可能性もあるわけで、なんだかこわい気がする。


安藤と、潤也や詩織との関係はよかったし、「死神の精度」の千葉や、グラスポッパーのカクテルがでてきたりし、他の作品ともリンクしているあたりは、にくい。でも、私には、この作品は消化不良だった。
お気に入り度★★★